建物タイプ
住宅
築年数
50年
間取り
Before
3LDK +納屋
After
2LDK +納屋
費用
870万円
工期
0年8ヶ月
施工箇所
家全体、キッチン、洗面、リビング、ダイニング、和室、窓、収納、廊下、玄関
山仲間が集うリビング・ダイニング

登山が趣味の福澤さんご夫婦は、「山が身近な環境に住みたい」という思いから、2019年に愛知県から下諏訪に移住してきました。

最初の5年は賃貸住宅に暮らしていましたが、その後、下諏訪に定住しようと決意し、中古住宅探しを開始。山仲間でもあり、下諏訪の地域おこし協力隊だった友人の紹介で、秋宮の裏の本郷エリアにあるこの物件を購入しました。家探しを始めて1年。庭付きの戸建てという条件と、限られた予算の中、ようやく出会ったのが庭と納屋がついたこの平家でした。

リノベーションは、友人の紹介もあり、町内の「本田食堂」や「ちいとこ商店」の設計を手掛けたLayer Architects + Open Designの宮澤さんに設計を依頼。3LDKだった間取りは、2LDKの回遊性の高い住まいへと生まれ変わりました。

宮澤さん「お二人の山仲間が遊びに来ることもあると聞いて、山小屋のような仲間が集える家にしようとコンセプトを決めて計画はスタートしました。ダイニングキッチン横にあった和室を洋室に変更して、ダイニングを新設。元々シンプルな間取りでしたが、リビングと和室の間にあった壁を取り払い、キッチン、ダイニング、リビングを繋げて回遊性を持たせることで、空間に広がりを持たせました。」

キッチンは仲間と集まってみんなで料理ができるように新しいものに交換して、広めの作業台を連結させてL字型になるよう位置を変更。あえてパントリーは作らずに、動きやすさを優先して、広くスペースをとっています。

写真の手前にある食器棚は、内装業を営んでいる有沙さんのお父様による造作で、壁の板の色と合わせて無垢の優しい風合いに仕上げました。あえて扉を付けずオープンな棚にすることで、来客を迎える際にも食器がすぐに取れて便利です。

火の温もりで、寒い冬も快適な住まいへ

下諏訪の古い戸建て住宅にありがちな悩みが、冬の寒さ。

そこで福澤さんご夫婦は、かねてからの夢だった薪ストーブの導入を決断します。さらに、断熱工事やペアガラスなどを積極的に採用することで、とても暖かで快適な住まいに仕上がりました。

宮澤さん「計画当初からお二人には家づくりに参加したいとリクエストをいただいていたので、天井、床、壁の解体は大工さんから指導を受けながら、お二人にしてもらいました。その後、すべての部屋の壁と、床下にはしっかり断熱材を入れて、窓サッシもアルミサッシから全て断熱性の高い樹脂サッシに替えています。
北側のキッチンにもストーブからの熱が届く動線を作り、どこにいても暖かい空間が実現しました。夜のうちにストーブで部屋を暖めておけば、冬場でも朝まで暖かさが持続します」

リノベーション後のリビングは、ストーブの火の揺らぎを見ながらゆっくりと時間が過ぎていく、福澤さんご夫婦のお気に入りの場所になっています。

自分たちで家をつくりあげる

工事が始まるまで、福澤さんご夫婦はあえて家全体の色のトーンは決めていなかったそう。お二人も工事に参加することで、徐々に自分たちの中でイメージが出来上がっていき、壁材や色味を決めていきました。所々にある漆喰の壁の色は、お二人で決めて、色を調合し、塗装しました。

立派な梁は、解体工事中に出てきたもの。天井は梁を現わにし、全ての天井と壁を板材で統一することで、空間の広がりを作っています。また、今後リノベーションをする際にクライミングウォールが設置しやすかったりと、追加で手を入れやすいよう余白を残しています。

宮澤さん「今回の工事は、ご夫婦以外にもお二人の山仲間や、有沙さんのお父様にも手伝ってもらっています。リビングのベンチや寝室との境目の障子は、お父様の造作です。洗面は有沙さんが自分でタイルを張り、鏡は骨董市で有沙さんが見つけたものを使いました。予算の関係もありますが、もともとの家にあった使い込まれた扉やガラス、タイル、照明、把手、蝶番や鋲に至るまで、使えるものはそのままに大切に使ったのもデザインのポイントです。」

リビングの壁には、山好きの2人が集めた牧野富太郎の植物画が飾られたり、棚には山にまつわる作家の作品があったり、温かみのある家のデザインに違和感なく溶け合っています。

宮澤さん「外壁や屋根、トイレ・お風呂の水回りと別棟の納屋は、今回はあえてリノベーションの対象にしていません。将来的には、納屋は有沙さんの趣味の狩猟で使うことを想定していますが、予算もありますし、ご自身でDIYする可能性も残して、今回は暮らしに必要な母屋の断熱と内装変更を優先しました。今回、お二人の山仲間がリノベーションを手伝ってくれたように、今後もお二人自らが家づくりをしていくのが楽しみです。」

Before/After

施工前

施工後

ダイニングキッチンに隣接した和室を洋室に変更。リビングと和室の間にあった壁を撤去し、キッチン・ダイニング・リビングの動線をよくすることで、コンパクトで暮らしやすい家に。
トイレや浴室は、状態が良かったため既存のものをそのまま利用しました。

施工前

施工後

ダイニングキッチンに隣接した和室を洋室に変更し、ダイニング・キッチン・リビングが広々とした空間に生まれ変わりました。

施工前

施工後

工事中に天井を撤去して見つかった梁を生かしたデザインにすることで、広々と気持ちの良いリビング・ダイニングに。
リビングとダイニングは床の高さが異なっていたため、調整して合わせています。

施工前

施工後

山仲間と料理が楽しめるように、キッチンと広めの作業台を連結させてL字型のキッチンに。キッチンは新しいものに交換しました。

施工前

施工後

玄関の断熱扉は造作し、狩猟が趣味の奥様の希望で、鹿の角をドアノブには使用。照明や扉上のガラスは、以前の住宅のものがそのまま使われています。

宮沢正輝さん

一級建築士

LayerArchitects+OpenDesignは、土地の風土や人のくらしを「Layer=層」のように、透かし重ねることで見えてくる、近い未来にふさわしい生活の場やモノコトを生み出すアトリエ・建築設計事務所です。

くらしのアトリエ LayerArchitects+OpenDesign

〒393-0053 長野県諏訪郡下諏訪町上馬場 5496-23
0266-78-3847
info@layer-architects.com
https://www.layer-architects.com

施主コメント

アウトドアなはずがインドアに

移住後、5年間は町内の賃貸住宅で暮らしていたので、「本田食堂」や「ちいとこ商店」など、今回設計をお願いした宮澤さんの設計物件はよく見ていて、ぜひ家の設計もお願いしたいなと思っていました。

物件を紹介してくれた友人とこの物件の内覧に行く際に、偶然にも宮澤さんが同行してくださり、そこで初対面となりました。内覧の段階で、建築家の視点からリノベーションの出来る・出来ないを教えてくださったので、安心して購入に進むことができました。

当初から宮澤さんには「家づくりは一緒にしたい」と伝えていたので、解体作業や壁塗りなど、一緒に作業を進めることができたのは非常に良い経験になりました。全くの素人でしたが、大工さんや宮澤さんに一つひとつ教えていただき感謝しかありません。
家に手を加えていくことで、家づくりの工程を理解することができ、「こうしたい」というイメージを具体的に持てるようになっていったので、この作業は人任せにしないでよかったなと思っています。

完成した家は、本当に居心地が良くて、これまで週末は山や自然に行く生活でしたが、すっかりインドアになってしまいました。一緒にリノベーションをしてくれた山仲間や両親も遊びに来てくれて、家での暮らしを楽しんでいます。

今後は、庭づくりや外装のリノベーションも自分たちで行う予定なので、まだまだ楽しみがたくさんありますね。

福澤さんご夫婦

施主

愛知県より移住。
2019年1月に下諏訪に移住、2023年に住宅の検討を始め、2023年9月より新居に入居。
郁郎さん(40代)、有沙さん(30代)の二人暮らし。