名前
福澤郁郎さん、有沙さん
職業
郁郎さん:会社員、有沙さん:アルバイト
概略
山好きが高じて、2019年に愛知県名古屋市より下諏訪に移住。2023年9月までは町営の下諏訪結婚新生活支援住宅で暮らし、その後町内で物件を購入し現在に至る。

山が近い環境に魅力を感じ、移住を検討した福澤さんご夫婦。友人が住んでいたことをきっかけに下諏訪の存在を知り、「まずは5年間だけ住んでみよう」と名古屋から移住しました。移住に伴う郁郎さんの転職や再就職、有沙さんが移住後に始めた狩猟、住宅の購入とリノベーション。移住前とはガラリと生活スタイルが変化したお二人に、移住の経緯やステップ、下諏訪を選んだ理由をお伺いしました。

山好きにぴったりの町、下諏訪

―下諏訪に移住したきっかけをお伺いできますか?

郁郎さん:夫婦共に山登りが好きで、長野県の山によく登っていました。名古屋から下道で片道5時間かけて通っていましたが、それも勿体無いなと思い始めて移住を検討するようになったんです。

有沙さん:検討を始めた当初は、名古屋の実家へのアクセスも考えて、飯田市を中心とする南信州地方や松本市を中心とした中信地方を考えていましたが、偶然にも山仲間がマスヤゲストハウス(下諏訪のゲストハウス)で働いていて、彼女から下諏訪を紹介してもらったのが最初のきっかけでした。

―移住検討の際に町を訪れたときの印象などをお伺いできますか?

郁郎さん:実は、僕は引っ越すまで一度も下諏訪に来たことがなかったんです(笑)

有沙さん:私は1度だけ、その山仲間に会いに来ていました。下諏訪は、360度どこの山にでも行ける立地で、「これは、登山家が住むための町だ!」と思ったのが第一印象ですね。
宿場町の歴史や温泉、カフェにレストランと行きたいお店がたくさんあって、とても魅力的だと感じました。あと、想像していた以上に住環境も整っていて「ここなら住めるぞ」と直感的に思いました。町の中に移住者の方が開業しているお店もたくさんあって、移住者の多さも感じ取ることができました。何より皆さん楽しそうだったのが印象的でした。
そんな中、友人から下諏訪町が運営する結婚新生活支援住宅※という、新婚夫婦向けの賃貸住宅を教えてもらって。たった1回の訪問でしたが、すっかり下諏訪が気に入っていたので、この住宅の情報を知った段階では移住の気持ちは固まっていましたね。

郁郎さん:妻が下諏訪から帰ってくるなり、「借りられる家があったよ」と(笑)。
改めて調べてみると結婚新生活支援住宅の審査基準もクリアしていたので、「まずは家を借りられる5年間住んでみて、その中でこの先をどうするか決めようか」と話をしました。移住を決めてから、3ヶ月のスピード移住でした。

※結婚新生活支援住宅:結婚を機に、下諏訪内で新たに生活を開始されるご夫婦に対して、5年間の期限付きで貸し出している賃貸住宅。貸出にあたっては、ご夫婦の婚姻タイミング、年齢等、各種審査があります。

家の至る所に山や自然を感じます。
温泉に狩猟。新しい趣味の始まり。

―お仕事はどうされたんですか?

郁郎さん:僕は、前の会社を退職して転職しました。元々物販の仕事をしていたので、全国どこに移住しても、前職の経験は活かせると思っていました。転職先はネットで探して、最初は大手のディスカウントストアに就職が決まったんです。けれど、転職してみたら全国転勤だと後から分かって…せっかく移住したの転勤はな…と思い、すぐにまた転職活動をしました。今は、勤務地が諏訪地域内に限られる会社で働いています。
移住してすでに2度の転職をしたわけですが、この諏訪エリアは精密業の工場も多いので、絞らなければ仕事はあるなという印象です。

有沙さん:私は移住を機に退職して、アルバイトをしています。
生活のコストは移住前後で、食費が少し安くなったかなというぐらい。でも、庭仕事をしたり、歩いて買いものにいったり、ゆったりと下諏訪で暮らしていると、目にする情報量が減って、何かを衝動買いするということがなくなりましたね。

―名古屋で暮らしていた頃と比較して、暮らしに変化はありますか?

郁郎さん:山にすぐに行けるようになったことと、頻繁に温泉に行くようになったことですね。休みの日は山登りか諏訪湖の散歩。その後に温泉に行くというのがルーティンになりました。湖畔の湯に行ってみたり、矢木温泉に行ってみたり…町内にある温泉を一人で巡って楽しんでいますよ。

有沙さん:私は狩猟を始めたんです。登山で立ち寄った霧ヶ峰のビジターセンターで、シカの増加による高山植物の食べ荒らし(食害)のことを知ったのがきっかけです。その原因の一つにハンターの減少があることを知って、「自分が狩猟をすることで山の力になれるのでは」と思ったんです。現在では少しずつではありますが、若いハンターの数も増えています。
猟に出ると、とれた命をいただくという感覚や、生かされているという感覚を身にしみて感じるんです。せっかく長野に来て、自然の恵みをいただく経験をしているので、今後は養蜂や家庭菜園なども始めたいなと考えています。

有沙さんの趣味の狩猟を象徴するように、入口の扉には鹿の角が。
家族総出のリノベーション

―結婚新生活支援住宅に住んで5年目に住宅を購入されたと伺いました。どうやって家を探したんですか?

有沙さん:移住して4年経った頃から、夫婦で改めて今後のことを考えるようになりました。二人とも山があって、温泉があって、生活しやすい下諏訪で暮らしたいという気持ちが同じだったので、家を買うことにしたんです。
家探しの条件は、①家庭菜園や養蜂ができる庭があること、②狩猟の道具が置けること、③広すぎず狭すぎずの平家。ある程度の広さの庭のある家を探すのが大変で…。

郁郎さん:空き家情報バンクや不動産サイトを見たり、直接不動産屋にも行きました。でも、リノベーションすることを考えると、なかなか予算に合う物件が見つかりませんでした。のんびり探していたということもありますが、そんな状態が約1年続きましたね。

有沙さん:そんな状態が続いていたので、下諏訪の地域おこし協力隊で山仲間でもある知人に相談してみたんです。そうしたら偶然、空き家情報バンク掲載直前の、今の家を教えてもらいました。町内の建築事務所Layer Architects + Open Designの宮澤さんが、お知り合いに頼まれて買い手を探していた物件でした。
物件内覧の際には宮澤さんも同席してくださって、建築家の視点から、私たちが希望するリノベーション内容のできる・できないを判断してくださいました。200万円という価格も決め手ではありますが、宮澤さんのおかげで安心して購入を進めることができました。

郁郎さん:宮澤さんが町内で手がけた駅前の「本田食堂」や、御田町のカフェ・バー「ちいとこ商店」のデザインを見ていたのも、宮澤さんにお願いした決め手ですね。約8ヶ月の工事期間を経て、2023年9月に自宅が完成しました。

解体や壁の塗装等、ご自身たちも工事作業を行い完成したご自宅。

―大工さんに任せるところは任せつつ、自分たちで出来るところはする。リノベ工事は家族総出だったと伺いました。

郁郎さん:宮澤さんには「家づくりは一緒にしたい」と当初から伝えていたので、山仲間や妻のお父さんにも手伝ってもらって、解体作業や壁塗りなど、一緒に作業を進めました。内装業を営む妻のお父さん以外は、全くの素人でしたが、大工さんや宮澤さんに一つひとつ教えていただき感謝しかないですね。

有沙さん:私たちの家は、山仲間が集まって過ごせるような「山小屋」がコンセプトです。でも、リノベを始めた当初は、こうしたいという明確なイメージがあったわけではないんです。壁を剥がしたり、柱を磨いたり、宮澤さんと話したり…家に手を加えていく中で、家づくりの工程を理解できるようになって、「こうしたい」というイメージを具体的に持てるようになっていきました。人によるところも大きいとは思いますが、機会や時間があるなら、実際に手を動かして家づくりをしていくことをお勧めしたいですね。きっといろんな発見があるのではないかと思います。

郁郎さん:予算の関係もあって実施できなかった屋根の塗装や庭づくりなどは、今後時間をかけて二人でやっていく予定です。まだまだやることはたくさんで、楽しみですね。

有沙さん:山登りが好きだったはずが、家ができてからは、あまりの心地よさに二人ともずっと家にいて、すっかりインドアです(笑)。工事を手伝ってくれた父や友人も遊びに来てくれて、家での暮らしを楽しんでいますよ。

憧れだった薪ストーブのあるリビングは二人のお気に入りの場所。
欲しいものが、ちょうどいい距離感に全部ある。

―お二人から見て、下諏訪の魅力はどんなところにありますか。

郁郎さん:山や自然が近くて、温泉もたくさんあって、コンテンツに事欠かないですよね。週末の散歩で諏訪湖を歩けば、富士山が見える。名古屋で暮らしていた時にはなかった光景が、下諏訪にはありますね。

有沙さん:下諏訪は、田舎すぎず町すぎず…バランスがとてもいいと思います。人との付き合いも田舎ほど密ではないけれど、都会ほど他人すぎることもない。
先日珍しく雪がたくさん降った日に、ご近所の方が雪かきをしているところに初めて参加させてもらいました。その時にご近所の方と少しお話ができて。これからもゆっくりご近所付き合いができたらと思いますが、こういう雪かきの時や、いざという時に、助け合える関係性があることは心強いですね。

郁郎さん:あとは良いお店がたくさんあることも魅力ですね。駅前の本田食堂や、朝ごはんも食べられるカフェのEric's Kitchen、ミズキ菓子店…美味しくて、また行きたくなるお店が下諏訪にはたくさんあります。名古屋にいた時には、わざわざ遠出して行ったようなお店が、下諏訪という小さな町に全部あるんですよ。

有沙さん:山仲間を呼ぶ時にも、山だけじゃなくて、諏訪大社をはじめとして連れて行きたい場所がたくさんあるんですよね。住宅地だけど、観光地の要素があるのもいいところだと思います。町のサイズ、人付き合い、お店のラインナップ…どれをとってもちょうどいいなと思うのが下諏訪の魅力じゃないでしょうか。

福澤郁郎さん、有沙さん

山好きが高じて、2019年に愛知県名古屋市より下諏訪に移住。2023年9月までは町営の下諏訪結婚新生活支援住宅で暮らし、その後町内で物件を購入し現在に至る。